整形外科上肢センター
診療科について
ポイント
患者にとってできる限りベストな治療を提供
上肢センターの治療方針
当センターでは、「患者にとってできる限りベストな治療を提供する」ことを大切にしています。整形外科の分野は、必ずしも患者の生命にかかわらない場合が多い診療科です。また治療法も様々です。患者はそれぞれの価値観や置かれた環境により多種多様なニーズがあるため、私たちは患者のご要望にできるだけ添えるよう、ご本人やご家族とよく話し合い、納得のうえで選択いただいた治療を行うことを心掛けています。
当センターは2012年に、「肩から手まで(上肢)の範囲」を専門に治療する部門として開設されました。上肢(特に手)は神経や血管、筋肉など非常に組織が入り組んでおり複雑な構造をしているため、治療に際し専門的な知識が要求されます。細かい手術が多く、術後の癒着や関節拘縮が起こりやすいため整形外科の中でも少し特殊な領域です。また、知識・経験の少ない整形外科医が治療すると陥りやすい治療の落とし穴が多くよい治療結果が得づらい分野でもあります。
当センターでは5名の手外科専門医が常勤しており、上肢の疾患や損傷の治療について幅広い対応が可能です。所属する専門医の数は道内一であり、うち3名は手外科指導医でもあります。当センターの診療および研修実績から日本手外科学会認定の専門医研修施設(手外科専門研修施設)として認定されています。
さらに当センターでは適切な治療を行うため、センター内および整形外科全体でのカンファレンスを実施し、色々な角度から治療方針を検討しています。
実施している治療・検査
当センターの体制と対象疾患
当センターで扱う外傷・疾患は、切断された組織や骨折、神経障害によるしびれ・痛み、筋力低下、組織欠損、失われた運動機能や感染等です。具体的には切断肢の再接着、血管吻合、腱縫合、骨接合、神経損傷の評価および除圧・移行・剥離・縫合、移植、関節や軟部組織の拘縮除去や腱移行、皮弁等による組織修に加え、感染症内科の協力のもと、感染に対する適切な評価・外科的治療を含めた総合的な治療などが行われます。
また手指の筋、腱、神経の外傷や肩、肘、手のスポーツ外傷などの急性外傷性疾患の他、四肢切断、血管損傷を伴う多発外傷、小児の肘周辺の骨折や手指の外傷に対しても迅速に対応が可能です。さらには救急対応の他、麻酔科や感染症内科とともに重度の症例の治療に尽力しています。
昨今は膿瘍に対してループドレーン法を推進しています。膿瘍腔に2か所穴をあけ、ドレーンを貫通させて体外で連結しループ状にすることで効率のよいドレナージが可能になり、膿瘍による感染の鎮静化に有効です。
当院では手術用顕微鏡を用いたマイクロサージャリーにより、切断指の再接着、神経や血管の縫合を行っています。さらにこの技術を活用して、上肢に限らず軟部組織損傷の手術も施行しています。
肩の腱板変性断裂や変形性肘関節症などの慢性疾患に対しても、関節鏡視下手術を取り入れて積極的に取り組んでいます。また重度の上腕骨頭粉砕骨折や腱板断裂症性変形性肩関節症に対して「リバース型人工肩関節置換術」も実施しております。従来の人工肩関節は自分の腱板が残っていることが前提となっており、人工肩関節を挿入しても、もとのように機能が回復することは難しい状況でしたが、当該治療法では肩の可動域も改善され、今まで人工肩関節をあきらめていた人でも、腕が上がり、痛みも取れて動かすことが可能となります。
当センターは、検査やリハビリも充実しています。
検査としては超音波検査やCT検査、MRIの他、神経伝導速度検査、筋電図も行っています。神経伝導速度検査は運動神経と感覚神経の電気信号が伝わる速さを測定する検査で、運動神経刺激後の筋肉の収縮反応時間も測定します。この検査は末梢神経障害の診断に活用することができます。
患者を上肢の疾患からより確実に回復させるためには、上肢専門のリハビリテーションを担当する作業療法士(ハンドセラピスト)によるリハビリテーションが重要になります。患者には外来通院時および入院中に上肢機能回復のための作業療法を受けていただいています。
当センターの治療、検査、リハビリが充実しているのは、整形外科全体のコメディカルのスタッフが充実しているからだと考えています。コメディカルのスタッフは医師と一緒に毎週カンファレンスを実施し、患者情報を共有しながらトータルで患者さんのケアを行っています。また当センターではこのカンファレンスにソーシャルワーカーも同席しているため、長期入院の患者が転院する際の調整をスムーズに行えています。
上記のような体制のもと、今後も地域の先生方とは地域医療を担う同志として常に連携させていただきたいと考えています。上肢の疾患・外傷がある患者についてのご相談やお問合せがありましたら、手外科専門医が所属する当センターにご連絡いただければと思います。
手術等の治療からリハビリテーションまで、患者の意向と生活環境を考えたフォローをともに行ってまいります。お困りの際はどうぞ気兼ねなくご連絡ください。
(文責:蔡 栄浩)
対象疾患
上肢(五十肩、肩腱板損傷、肘変形性関節症、肘部管症候群、手根管症候群、キンベック病、舟状骨骨折、上肢外傷)・骨軟部腫瘍・スポーツ障害・関節リウマチ・骨折、感染症
特殊医療機器
診療科データ
実績
主要検査・手術実績(2021年)
手の関節鏡下手術
肘の関節鏡下手術
肩の関節鏡下手術
その他
2020 | 2021 | |
---|---|---|
上肢 | 672 | 812 |
肩周辺 | 140 | 162 |
外傷 | 62 | 69 |
変性・変形疾患 | 41 | 50 |
感染 | 10 | 15 |
腫瘍 | 0 | 4 |
金抜・骨内異物除去 | 25 | 24 |
その他 | 2 | 62 |
上腕骨 | 67 | 92 |
外傷 | 51 | 75 |
変性・変形疾患 | 0 | 3 |
感染 | 0 | - |
腫瘍 | 0 | 1 |
金抜・骨内異物除去 | 15 | 13 |
その他 | 1 | - |
肘 | 53 | 48 |
外傷 | 23 | 25 |
変性・変形疾患 | 15 | 15 |
感染 | 2 | 1 |
腫瘍 | 0 | - |
金抜・骨内異物除去 | 11 | 7 |
その他 | 2 | - |
前腕骨 | 24 | 7 |
外傷 | 14 | 1 |
変性・変形疾患 | 1 | 1 |
感染 | 1 | - |
腫瘍 | 2 | 1 |
金抜・骨内異物除去 | 3 | 4 |
その他 | 3 | - |
手関節 | 210 | 275 |
外傷 | 94 | 136 |
変性・変形疾患 | 58 | 79 |
感染 | 1 | 1 |
腫瘍 | 9 | 5 |
金抜・骨内異物除去 | 43 | 54 |
その他 | 5 | - |
手 | 178 | 228 |
外傷 | 79 | 110 |
変性・変形疾患 | 72 | 84 |
感染 | 17 | 10 |
腫瘍 | 6 | 17 |
金抜・骨内異物除去 | 2 | 7 |
その他 | 2 | - |
学術論文(査読のあるもの)(2021年1月〜12月)
-
4
和文学会誌
-
11
英文学会誌
※1
※1
- 高橋敏行, 原政人, 青山剛, 上田茂雄, 西村由介, 平野仁崇
Spinal Surgery 35(3) 276-287, 2021 - Sumihisa Orita, Yasuhiro Shiga, Kazuhide Inage, Yawara Egucji, Satoshi Maki, Takeo Furuya, Yasuchika Aoki, Masahiro, Inoue, Richard A. Hynes, Masao Koda, Hiroshi Takahashi, Tsutomu Akazawa, Junichi Nakamura, Shigeo Hagiwara, Gen Inoue, Masayuki Miyagi, Shunsuke Fujibayashi, Takahiro Iida, Yoshihisa Kotani, Masato Tanaka, Takao Nakajima, and Seiji Ohtori
Spine Surg Relat Res, vol.5, No.1, p1-p9, 2021 - Takeshi AOYAMA, Daisuke SHIMBO, Keigo HONOKI, Naoshi OBARA
NMC Case Report Journal 2021 Volume 8 Issue 1 207-213 Published: 2021
Released: June 10, 2021
学会発表・講演(2021年度)
国際学会
国内学会
講演
救急
24時間 365日
外来
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日/祝 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
08:40-17:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - |
午前
|
蔡 - 塚本 前田 - 小原 青山 |
相澤 飯田 蔡 前田 宮田 西田 青山 |
上杉 - - 入船 大野 飯田 古川 |
上杉/相澤 宮田 - 前田 - 西田 青山 |
上杉 小原 - 西田 - - - |
- - - - - - - |
- - - - - - - |
午後
|
蔡 上杉 (塚本) 前田 - - 青山 |
古川(隔週) 飯田 - - 塚本 - 青山 |
- - 高橋 - - - 古川 |
相澤 青山 蔡 - 塚本 西田 青山 |
- 小原 古川 - - - - |
- - - - - - - |
- - - - - - - |
所属医師
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
整形外科部長・整形外科上肢センターセンター長
蔡 栄浩YONG-HO CHOI
- 診療科・専門
- 整形外科/肩・肘・手
- 資格・学会
- 日本整形外科学会整形外科専門医/日本手外科学会手外科専門医・指導医
- 他所属・認定
- 医学博士/義肢装具等適合判定医 /がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
整形外科 主任医長
入船 秀仁HIDETO IRIFUNE
- 診療科・専門
- 診療科・専門 整形外科/四肢外傷、骨盤外傷、脊柱外傷、マイクロサー ジャリー、手外科
- 資格・学会
- 日本整形外科学会整形外科専門医/日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医/日本手外科学会手外科専門医・指導医
- 他所属・認定
- 医学博士/がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修終了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
整形外科 主任医長
西田 欽也KINNYA NISHIDA
- 診療科・専門
- 整形外科/肩・肘・手
- 資格・学会
- 日本整形外科学会整形外科専門医・認定スポーツ医/日本手外科学会手外科専門医・指導医
- 他所属・認定
- 医学博士/がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
整形外科 主任医長
上杉 和弘KAZUHIRO UESUGI
- 診療科・専門
- 整形外科/上肢、マイクロサージャリ―、関節鏡
- 資格・学会
- 日本整形外科学会整形外科専門医・認定スポーツ医/日本手外科学会手外科専門医
- 他所属・認定
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
整形外科 主任医長
前田 明子AKANE MAEDA
- 診療科・専門
- 整形外科/一般整形、上肢
- 資格・学会
- 日本整形外科学会整形外科専門医/日本手外科学会手外科専門医
- 他所属・認定
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
患者さんのご紹介方法
※1 希望医師、希望日時で予約をしてください。
※2 ご予約後、当院にて受付の上、「予約票」を送信いたしますので、「紹介状」と合わせて印刷して患者さんにお渡しください。