呼吸器内科
診療科について
ポイント
診療を中心に、研究・後進育成およびスムーズな地域の医療連携を目指す
幅広い呼吸器疾患への対応と、受診しやすい体制の整備を通して地域に貢献
当科では“質の高い医療の提供と地域医療ネットワークの形成”を基本方針として、肺がん、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、細菌性肺炎といったほとんどの呼吸器疾患に対応しています。受診される患者さんの症状はさまざまで、咳嗽、喀痰といった呼吸器由来のものから、発熱などの全身症状や肺がん転移により起こる多臓器由来のものまで幅広く診療しています。
もっとも治療件数が多いのは肺がんを含む腫瘍性疾患で、入院患者さん全体の3分の2ほどを占めており、紹介される患者さんの割合も高いです。当科が1番注力している領域であり、迅速な検査と治療が提供できるように心がけています。診察から検査までにかかる時間は、遅くとも2週間以内の場合がほとんどです。診察から検査の予約・入院まで、1週間程度となることが多いですが、状況に応じて当日あるいは数日以内の入院で対応することもあります。
胸部X線写真やCT写真などの検査から得られる画像所見を参考に、安全性を重視した検査を行い、適切な診断に基づき、全ての患者さんに適切な治療ができるよう心がけています。また、患者さんに対する診断および治療内容の説明の際には、できる限り丁寧に分かりやすく行うだけでなく、患者さんのご意向や心情に寄り添うことも大切にしていることの1つです。
また、Web予約システムを活用してスムーズな医療連携を目指しています。当科に患者さんを紹介してくださるクリニック側にとって、従来のシステムは手書きの書類作成や予約の電話が必要なため、紹介に手間がかかってしまうのが現状です。私はほかの病院で外来を担当することもあるため、実際に紹介する側・される側の両方の立場を経験しました。その中で、デジタル化により手間を省けるシステムが時代の流れに乗って広がっていけばよいと考えるようになりました。
現在、近隣の先生方のために、従来の予約枠とは別個に、速やかに予約できるオンライン枠を設けています。オンライン予約枠で予約を確保できる状況を作ることで、患者さんの待ち時間の短縮にもつながります。紹介する側・される側・患者さんの三方それぞれの負担が軽減できるよう環境の整備に努めるとともに、地域の呼吸器診療の中心的役割を担えるよう、さらなる地域の医療連携への貢献を目指してまいります。
豊富な症例を経験できる環境を生かし、文武両道の後進育成に注力
当科は日本内科学会専門研修プログラム基幹施設、日本呼吸器学会専門研修プログラム連携施設として施設認定を受けており、後期研修医の受け入れを随時行っています。若手の先生が専門医の資格を取るのに十分な経験を積むことが可能であることに加え、治療や検査の手技と学術的な知識の両方を身につけるための指導体制も整えています。特に気管支鏡検査に関しては、年間300件ほどを3~4人の医師で行っており、札幌市内では上位の手技・症例経験数を誇ります。
また、若手の先生たちと毎週抄読会を行うことで、手技だけではなく学術的な知識も身につける機会を設けています。学会発表に関しては、各学会の地方会での発表を必須としており、全国学会では希望者が発表を行えるような環境を作っています。
指導の際は、当科で学んだことをほかの病院でも生かしてもらえるよう、仕事をしやすい環境を作り、後輩医師が次の病院に行っても自分たちが責任を負うような気持ちで手厚い指導を行っています。
実施している治療・検査
肺がん
肺がんは、当科においてもっとも治療件数が多い病気です。近年、非小細胞肺がんにおける新しい標的遺伝子が発見され、分子標的薬の開発が進んできています。そのため、標的遺伝子の有無を確認すべく、気管支鏡を用いた生検の件数が年々増えています。また、近年では、免疫チェックポイント阻害薬も薬物治療の中心として確固たる地位を確立しています。免疫チェックポイント阻害薬を使用するにあたって、有害事象の管理が問題になることが多いのですが、当院では、有害事象対策チームを設けており、他科と協力しながら有害事象対策を行っています。
治療方針は、科内カンファレンスで決定されることが一般的です。その際には、標準治療であるガイドラインに準拠して決定しております。また、呼吸器外科・放射線治療科との合同カンファレンスが毎週開催されており、手術適応や放射線化学療法などの治療法を検討する体制を整えております。多重がん症例ではキャンサーボードを通じて院内各科と連携し、多角的に治療方法を模索しています。
肺がんの治療方針はガイドラインの更新頻度も多く、細分化されてきています。病気についての情報量も多く、複雑です。今はインターネットの普及によって、一般の患者さんも多くの情報を得られる時代になっています。その一方で、情報量が膨大であり“何が本当に正しいものなのか”といった判断や理解が難しい状況でもあります。情報の取捨選択は難しく、たとえ医療従事者であっても正確な情報を見分けて理解することが困難な場合もあるのが現状です。そこで私たちは、“標準治療が最善の治療”であることを「日本を含めた世界で、もっとも適切だと立証された治療を提供しています」といったように患者さんに分かりやすくお伝えするなどして治療について十分に理解を深めていただき、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
診断されてから治療を開始するにあたり、早期から進行期、終末期などのステージを問わず、しっかりと関係性を構築し、患者さんとご家族の心身をサポートすることが重要です。特に、進行期・終末期においては、多職種の連携が重要です。当科は多職種連携による能率的なチーム医療でサポートを実現し、必要に応じて訪問診療と連携して在宅医療にも対応できる体制を整えています。このように、診断から治療まで包括的にケアするシームレスな診療を目指しています。
また、 現在は慢性閉塞性肺疾患、非小細胞肺がんを対象とした治験を実施中です。非小細胞肺がんに対する治験は2023年から開始しており、札幌市内でも限られた肺がんの治験施設の1つとなっています。臨床研究も行っており、北海道肺癌臨床研究会(HOT)、北東日本研究機構(NEJ)、LC-SCRUM-Asiaなどの院外のグループにも参加し、北海道内外問わず他施設とも連携しています。
間質性肺炎
胸部CTの進歩により、間質性肺炎は軽症の段階で発見されるケースが増えています。しかし、その一方で特発性間質性肺炎をはじめ、多様な呼吸器疾患が鑑別の対象であるため慎重な診断が重要とされる病気でもあります。慢性心不全などの循環不全も間質性肺炎と同様の画像所見を呈することがあるため、画像検査に加えて身体所見、血液検査、臨床経過などの情報も参考にしながら診断を進める必要があります。
当科では、特発性間質性肺炎の中でもっとも多い特発性肺線維症の治療を主に行っております。呼吸機能低下がみられるような進行性の症例においては進行の抑制を目標にし、指定難病の認定後に抗線維化薬を導入しています。
間質性肺疾患は確定診断が重要です。鑑別が難しいことも多いですが、血清マーカー(SP-A、SP-D、KL-6)で病勢を評価しながら経気管支肺生検(TBLB)、気管支肺胞洗浄(BAL)を適宜行い、正確な診断に基づいた診療を進めています。また、治癒の難しい病気が多いため、合併症を考慮しながらQOLを重視した治療が大切だと考えています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
意外にも認知度が低いCOPDは、喫煙を原因として肺気腫や慢性気管支炎などにより呼吸機能が低下した病気と考えられます。呼吸困難などの症状が現れてからの受診が多い病気であることも特徴の1つです。COPDは不可逆的な肺の変化を起こすため、症状の緩和とADLの改善が治療目標となります。治療には吸入療法による症状緩和や、重症例に対しては在宅酸素療法(HOT)の導入が有用です。しかし、より重要なことは胸部CTや呼吸機能検査によるCOPDの早期発見により、直ちに禁煙指導や生活指導を開始することです。これらの指導により、将来的な症状進行の抑制が可能となります。
当院では、慢性呼吸器不全の患者さんに対してHOTと呼吸リハビリテーションを実施しています。在宅医療も含めた地域包括的システムのもとで患者さんそれぞれに合った治療やリハビリを提供し、COPD患者さんの身体活動性の向上をさせるとともに、地域においてCOPDの啓蒙にも努めてまいります。
気管支喘息
吸入治療の普及によって喘息発作のコントロールが格段に進歩しました。そのおかげで喘息の患者さんのほとんどは外来診療が可能になりましたが、その一方で重篤な発作によって救急対応や人工呼吸器が必要な場合など、重症の患者さんは一定数いらっしゃいます。当科では、既存の治療法ではコントロールできない難治性の喘息に対して、サイトカインをターゲットにした抗体医薬品の使用を検討しています。
また、新しい概念である喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)についても、胸部CT、呼吸器機能検査、呼気NO測定を併用して診断と治療を行っております。
対象疾患
肺がん、気管支喘息、肺気腫、COPD、間質性肺炎、特発性肺線維症、細菌性肺炎、非結核性抗酸菌症、気管支拡張症、薬剤性肺障害、じん肺、慢性呼吸不全
特殊医療機器
気管支ビデオスコープ、細径超音波プローブ、超音波気管支ファイバービデオスコープ、スパイロメーター、総合肺機能検査システム、呼気NO測定装置
診療科データ
実績
主要検査・診療実績(2017年1月〜2022年12月)
2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
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入院総数/年 | 908 | 913 | 1,016 | 974 | 930 | 938 |
腫瘍性疾患 | 640 | 592 | 622 | 550 | 581 | 570 |
感染性肺疾患 | 58 | 86 | 96 | 133 | 118 | 114 |
間質性疾患 | 76 | 76 | 99 | 74 | 75 | 104 |
気管支疾患(喘息を含む) | 42 | 52 | 58 | 40 | 30 | 48 |
閉塞性肺疾患 | 28 | 32 | 50 | 41 | 31 | 40 |
縦郭疾患 | 4 | 4 | 7 | 4 | 5 | 3 |
胸膜疾患 | 27 | 33 | 43 | 33 | 29 | 33 |
多臓器疾患 | 12 | 18 | 18 | 1 | 0 | 1 |
その他の肺疾患 | 64 | 75 | 91 | 98 | 61 | 25 |
実施中の治験・臨床研究
治験
- 慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者を対象としたitepekimabの第III相試験ポスター
- 非小細胞肺がんを対象としたDS-1062aの第III相試験
特定臨床研究
- 根治照射可能なIII期非小細胞肺癌でPS2あるいは高齢者に対する低用量カルボプラチン連日投与と胸部放射線同時併用療法後、デュルバルマブ維持療法の第II相試験
- Performance Status 2の進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の第II相試験
臨床研究
- アジア人の非小細胞肺癌における個別化医療の確立を目指した、遺伝子スクリーニングとモニタリングのための多施設共同前向き観察研究(LC-SCRUM-Asia)
- 非小細胞肺癌における薬物治療耐性後の個別化医療の確立を目指した、遺伝子スクリーニングとモニタリングのための多施設共同前向き観察研究
- 高齢非小細胞肺癌患者の患者満足度に対する機能評価(Geriatric Assessments)の有用性を検討するクラスターランダム化第3相比較臨床試験
- 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)または進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究
- 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)または進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究(J-TAIL-2)におけるバイオマーカー探索研究
- 悪性胸膜中皮腫患者におけるニボルマブ治療効果予測因子の探索(HOT1901B)
- 高齢者EGFR遺伝子変異陽性肺癌へのオシメルチニブ⼀次治療に関するレトロスペクティブ研究(HOT2002)
- ドライバー遺伝子変異/転座陽性非小細胞肺癌に対するデュルバルマブ投与に関するレトロスペクティブ研究(HOT2101)
- Osimertinibによる薬剤性肺障害後の後治療の実態とEGFR-TKI re-challengeの安全性・有効性を調査する後方視的観察研究(Osi-risk Study)
- PD-L1高発現未治療進行非小細胞肺癌患者におけるペムブロリズマブおよびペムブロリズマブ併用化学療法の多施設共同観察研究
- 高齢者におけるPD-1経路阻害薬長期投与症例に関するレトロスペクティブ研究(HOT1902B)
- 特発性肺線維症(IPF)合併非小細胞肺癌に対する周術期ピルフェニドン療法の術後急性増悪抑制効果に関する第III相試験(NEJ034)
- 免疫チェックポイント阻害薬を投与された間質性肺炎合併非小細胞肺癌における肺臓炎のリスク因子同定のための多施設後ろ向き研究
- 免疫チェックポイント阻害薬を投与しているがん患者におけるePROを用いた免疫関連有害事象に関するレジストリ研究
- EGFR遺伝子変異陽性再発・進行非小細胞肺がん患者における第1/2世代および第3世代EGFR-TKI投与後のIGFシグナル関連分子の発現に関する多施設共同前向き観察研究
- 切除後の非小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ術後補助療法の多機関共同前向き観察研究<J-CURE>
- 進展型小細胞癌・局所型小細胞癌再発例における、免疫チェックポイント阻害薬・殺細胞性抗癌剤併用療法と免疫関連有害事象に関するレトロスペクティブ研究
学会・講演(2022年度)
Mycobacterium aviumによる感染性肺嚢胞の1例
気管支鏡検査により診断しえた気管・気管支アミロイドーシスの2例
喀血に対する血管塞栓術後に金属コイルが気管内に貫通・露出し、気管支鏡下に切断・抜去し得た1例
外来
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日/祝 | |
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08:40-17:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - |
午前
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横尾 鎌田 担当医 |
山田 長尾 - |
山田 担当医 - |
横尾 担当医 - |
担当医 担当医 - |
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午後
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所属医師
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医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
副院長・オンコロジーセンター センター長
山田 玄GEN YAMADA
- 診療科・専門
- 呼吸器内科/肺がん、間質性肺炎、COPD
- 資格・学会
- 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医/日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医
- 他所属・認定
- 医学博士/がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
呼吸器内科 主任部長
横尾 慶紀KEIKI YOKOO
- 診療科・専門
- 呼吸器内科/-
- 資格・学会
- 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医/日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医/日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医
- 他所属・認定
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医/がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
医長
長尾 喬生TAKAYUKI NAGAO
- 診療科・専門
- 呼吸器内科/-
- 資格・学会
- 日本内科学会認定内科医/日本呼吸器学会呼吸器認定医
- 他所属・認定
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修終了
-
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
医員
鎌田 弘毅KAMADA HIROKI
- 診療科・専門
- 呼吸器内科/-
- 資格・学会
- 日本専門医機構認定内科専門医
- 他所属・認定
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
-
札幌医科大学附属病院
専攻医
戸島 佳和TOJIMA YOSHIKAZU
- 診療科・専門
- -
- 資格・学会
- -
- 他所属・認定
- がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
患者さんのご紹介方法
※1 希望医師、希望日時で予約をしてください。
※2 ご予約後、当院にて受付の上、「予約票」を送信いたしますので、「紹介状」と合わせて印刷して患者さんにお渡しください。