乳腺・内分泌外科

診療科について

科の特徴

患者主体の総合的な医療

乳腺・内分泌外科では、乳がん、甲状腺がんなど悪性腫瘍を中心に診断、治療、治療後の定期検査等を常に最良の方法で行うことができるよう取り組んでいます。

思い込みや独りよがりの治療ではなく、最新のガイドラインに則った標準治療をベースとしながらも、個々の患者さんの背景も考慮したオーダーメイドの医療を心がけています。

外科治療のみならず、総合内科、腫瘍内科、放射線治療科、整形外科、形成外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、リウマチ科、呼吸器科、消化器科、腎臓内科、婦人科、麻酔科など、他科との連携のもとに総合的な治療を提供できるのも当院の特徴です。治療を受ける側に立ち、安心してすべての治療が受けられるよう取り組んでいます。

低侵襲性、整容性を追求

乳腺、甲状腺いずれも女性に多い疾患です。根治性が第一ですが、整容性も重要と考えています。乳がんにおいては、乳房温存手術や乳房全摘後の乳房再建、皮膚温存乳房切除術、乳頭温存乳房切除術、良性甲状腺疾患においては、内視鏡手術の導入など、整容性を考慮した手術も積極的に導入しています。

乳腺外科の紹介

乳がんの早期診断

乳がんの罹患率は増加を続け、女性の第1位、死亡率は第5位ですが、30歳から64歳の働き盛りの女性のがんによる死亡では1位となっています。他のがんと同様、早期発見が重要であり、健診受診や早期診断技術が必要となります。

当院では乳がん検診はもちろん、3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)、超音波検査、乳腺専用MRIを用いた画像診断や吸引針生検を用いた組織診断を行い、早期診断を心がけております。

集学的な治療、チーム医療

現在では、治療前に針生検で組織を採取し“がんの性質”を調べることが重要で、それにより再発リスクが低いと判断した場合は、可能な限り低侵襲な治療をお勧めしますし、一方で、再発リスクが高いと判断した場合は、化学療法(抗がん剤)を先行させて腫瘍への反応(治療効果)を確認し、腫瘍を縮小させて乳房温存率を高めることも目指します。

乳がんの治療とは、外科的治療(手術)、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤)、分子標的療法、放射線療法を適切に組み合わせることにより、治療成績の向上を目指すものです。この目的のもと、腫瘍内科、放射線治療科、外来化学療法チームとは毎週、形成外科・病理診断科とも適宜カンファレンスを行い、集学的な治療を心がけています。

形成外科との連携により、乳房温存手術や乳房全摘後の再建も可能であり、患者さんにあった幅広い治療選択を提供することができます。

また、北海道内外の乳腺外科とも連携し、医学の進歩・医療の質向上のために全国規模の臨床試験にも積極的に参加しております。そこから得られた最新情報を患者さんに提供できるよう常に心がけています。

センチネルリンパ節生検

一般的に“がん”の手術にリンパ節郭清はつきものです。“がん”は周囲のリンパ節に転移することがあります。“がん”本体からリンパの流れに従って拡散・転移するリンパ節を流れに沿って系統的に切除することをリンパ節郭清といい、“がん”の手術では一般的に行なわれる手技です。乳がんの場合、リンパ節郭清の対象は腋窩リンパ節なので、これを腋窩郭清といいます。腋窩郭清を行うと一定の割合で患肢のリンパ浮腫や可動制限など生活の質を低下させる好ましくない合併症を伴います。それを回避するため、術前検査で転移がないと思われる患者さんに対して、“センチネルリンパ節生検”を行なっています。今では多くの病院で行なわれている手技ですが、当院は北海道でも数少ないRI法と色素法の併用が可能な施設であり、短時間に確実にわずかな創(約1.5㎝)で検査が可能となっています。この技術により、多くの患者さんが安全性を損なわずに腋窩リンパ節郭清を省略できます。

内分泌外科の紹介

手術の安全性、低侵襲化を目指して

手術に際して、不要な出血や漿液腫予防のために、“エネルギーデバイス”と言われる超音波凝固切開装置や血管シーリングシステムを積極的に使用しています。これにより安全、確実に止血、手術時間の短縮ができます。また、縫合糸が必要な場合も吸収されてなくなる糸(吸収糸)を用い、体内に異物である糸を残しません。

甲状腺手術の際に、嗄声(声がかすれる)、誤嚥という合併症があります。甲状腺のすぐ後面に、反回神経という声帯をコントロールしている神経が走行しており、この神経が損傷され麻痺してしまうことにより起こります。一時的な症状で術後しばらくすると改善することが多いですが、日常生活に支障を来します。

これを回避するために、術中神経モニタリングという装置を使用することで、より安全に神経を同定し温存できる可能性が高まります。

当科では、主に甲状腺手術でこの装置を使用することにより安全性を高めた手術が可能になります。

甲状腺内視鏡手術

2016年4月より、甲状腺良性腫瘍やバセドウ病に内視鏡下甲状腺切除術が保険適用となりました。当院でも2017年9月から施行可能になりました。

従来の手術では、首元に約8㎝の傷がつくため、どうしても術後の傷が気になり、手術を躊躇する要因となっていました。内視鏡下手術では、術創が2〜3㎝と小さく、首元に傷がつくことなく、鎖骨下(シャツを着ても隠れる場所)など目立たないところになるため、整容性に優れています。特に女性に多い疾患であるため、とても有用です。

当院でも外科、耳鼻咽喉科と協力し安全に施行しております。

特殊医療機器

・GPS navigater(センチネルリンパ節生検で使用)

・乳腺MRI(専用コイル)

・トモシンセシス機能を装備したデジタルマンモグラフィ

・吸引式組織生検用針キット(バコラバイオプシーシステム)

・超音波凝固切開装置、血管シーリングシステム(手術で使用)

・表面電極付挿管チューブを用いた神経モニタリング装置:NIM(nerve integrity monitoring)(甲状腺手術で使用)

(文責:加藤 弘明)

診療科データ

実績

診療実績(2022年1月~12月)

  • 乳腺エコー検査件数:1,832件
  • マンモグラフィ検査件数:801件(トモセンシス:43件)
  • 甲状腺エコー件数:1,789件
  • 乳腺疾患手術件数:乳がん85例(うち温存手術20例、一期的再建2例)、良性腫瘍3例)
  • 甲状腺疾患手術件数:甲状腺がん1例、良性腫瘍2例

専門外来

乳腺・内分泌外科外来を月・水・金曜日[時間帯は各曜日で異なります(完全予約制)]に開設しています。患者サポートセンターにご連絡いただき、ご確認ください。

所属医師

  • 渓仁会グループ・医療法人渓仁会

    最高責任者/理事長

    成田 吉明YOSHIAKI NARITA

    診療科・専門
    呼吸器外科、乳腺外科/外科(肺・縦隔、乳腺・甲状腺)
    資格・学会
    日本外科学会外科専門医・指導医/日本胸部外科学会認定医/日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医・指導医/日本乳癌学会乳腺専門医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医/肺がんCT検診認定機構肺がんCT検診認定医師/日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師
    他所属・認定
    日本呼吸器外科学会 評議員/北海道外科学会 評議員/日本臨床外科学会北海道支部 評議員/日本胸部外科学会北海道地方会 評議員・監事/札幌市医師会 監事/札幌市医師会勤務医協議会 会長/札幌地方裁判所 専門委員/日本臨床外科学会 会員/日本肺癌学会 北海道支部役員/日本甲状腺外科学会 会員/日本Acute Care Surgery学会 会員/日本乳癌検診学会 会員/日本CT検診学会 会員/日本胸腺研究会 会員/日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 会員/日本臨床倫理学会 会員/ロボット支援鏡視下手術認定資格 /がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修 修了
  • 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

    胸部外科 部長

    加藤 弘明HIROAKI KATO

    診療科・専門
    呼吸器外科、乳腺外科/肺・縦隔、乳腺・甲状腺、ヘルニア、内視鏡手術
    資格・学会
    日本外科学会外科専門医/日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医/日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師/日本乳癌学会乳腺認定医/日本がん治療認定医機構がん治療認定医
    他所属・認定
    ロボット支援鏡視下手術認定資格/がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
  • 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

    外科 副部長

    阿部 大MASARU ABE

    診療科・専門
    消化器外科、乳腺外科/呼吸器、甲状腺、乳腺
    資格・学会
    日本外科学会外科専門医/日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医・認定ロボット支援手術プロクター(手術指導医)/日本乳癌学会乳腺認定医/日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師
    他所属・認定
    ロボット支援鏡視下手術認定資格 /がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
  • 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

    主任医長

    久保田 玲子REIKO KUBOTA

    診療科・専門
    消化器外科、乳腺外科/呼吸器
    資格・学会
    -
    他所属・認定
    がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修
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